後立山北部 杓子岳(2812m)、鑓ヶ岳(2903.2m)、旭岳(2867m)、白馬岳(2932.3m)、 2016年8月20日〜21日  カウント:画像読み出し不能

所要時間

8/20
3:42 猿倉−−4:21 林道終点−−4:43 白馬尻小屋−−5:40 雪渓に乗る−−5:48 雪渓から降りる−−6:55 避難小屋−−7:35 村営頂上宿舎(テント設営) 9:09−−10:14 杓子岳−−10:57 鑓ヶ岳(休憩) 11:39−−13:11 村営頂上宿舎(休憩) 15:05−−15:48 旭岳(岩峰てっぺん)−−16:24 村営頂上宿舎(幕営)

8/21
4:22 村営頂上宿舎−−4:47 白馬山荘−−5:01 白馬岳(休憩) 6:01−−6:07 白馬山荘−−6:15 村営頂上宿舎 6:19 −−6:44 避難小屋−−7:13 雪渓に乗る−−7:18 雪渓から降りる−−7:40 白馬尻小屋−−8:17 猿倉

場所長野県北安曇郡白馬村/富山県黒部市
年月日2016年8月20日〜21日 1泊2日幕営
天候8/20 晴後霧時々雨
8/21 快晴
山行種類一般登山
交通手段マイカー
駐車場猿倉の登山者用駐車場
登山道の有無旭岳は踏跡、それ以外はあり
籔の有無無し
危険個所の有無旭岳最高峰と思われる岩峰登りは落ちれば痛いでは済まない。特に下りは要注意
山頂の展望どこも大展望
GPSトラックログ
(GPX形式)
1日目(猿倉〜村営頂上宿舎〜杓子岳〜鑓ヶ岳〜村営頂上宿舎〜旭岳〜村営頂上宿舎)
2日目(村営頂上宿舎〜白馬岳〜村営頂上宿舎〜猿倉)
コメント猿倉から白馬三山+旭岳に登る。金曜夜の天気予報より現地の天候が悪く初日は8:00には稜線はガスに覆われお昼以降は断続的に雨。久しぶりに本降りの中の幕営となった。翌朝は快晴で大展望を楽しめた


地図クリックで等倍表示
1日目断面図(猿倉〜村営頂上宿舎〜杓子岳〜鑓ヶ岳〜村営頂上宿舎〜旭岳〜村営頂上宿舎)
2日目断面図(村営頂上宿舎〜白馬岳〜村営頂上宿舎〜猿倉)


猿倉荘 林道終点
白馬尻小屋 台風が近い東の空には積乱雲
沢沿いに出ても雪渓が無い! 標高1730m付近。もうすぐ雪渓末端
雪渓末端はズタズタで右岸を高巻きする 標高1900m付近でやっと雪渓に乗る
でもクレバスが数か所に口を開けていた 標高1960m付近で雪渓を下りて左岸へ
左岸の秋道 雪渓上端の巨大スノーブリッジ
野生動物観察用カメラ 雪渓を振り返る
ガスが上がる前にヘリが何往復もしていた ガンガン急登中
トレラングループに追い越される 振り返る
広い尾根上を登る
お花畑を登る。夏の花は終わって秋の花に変わっている。トリカブトが多い
避難小屋。追い越されたトレランナーが休憩中 村営頂上宿舎が見えた
水源の雪渓は大量に残っていた テント場受け付けは13:00からとのこと
テント場にはテント無し。本日着のテント宿泊者では私が最初
1人用のスペースに設営 ガスってきたが鑓ヶ岳に向かう
杓子岳もガスの中 意外にコマクサが多く咲いていた
杓子岳北側鞍部 杓子岳北側鞍部から見た大雪渓
大雪渓上のルート。短すぎる・・・ 杓子岳直登ルートへ
杓子岳山頂。ガスで展望なし 杓子岳東側は崖
杓子岳〜鑓ヶ岳鞍部 杓子岳〜鑓ヶ岳鞍部から見た西側
杓子岳〜鑓ヶ岳鞍部から見た劒岳北峰稜線
高度を上げると再びガスの中へ 鑓ヶ岳山頂
鑓ヶ岳山頂 鑓ヶ岳からの帰りで雷鳥に遭遇
テント場到着時は雨だったがその後一時的に晴れた
晴れ間に稜線に上って撮影した白馬岳、旭岳。この後再びガスに覆われた
旭岳に向かうことに 県境稜線に上がるが既にガス
旭岳の案内があるが山頂への正式登山道は無い 鞍部へと下る
鞍部より登山道は尾根上ではなく南を巻く この看板が旭岳へ続く踏跡入口
これでも踏跡が付いている ここも踏跡があるのだが写真では分からないなぁ
振り返る ハイマツの境界が踏跡
山頂南肩直下 奥の岩が最高峰か?
旭岳南肩から北を見ている。明らかに高い 岩峰の西から見ている。破線を登った
鞍部から岩峰を見上げる 岩峰てっぺん。狭い
岩峰てっぺんから西を見る 清水岳
テント場に戻る途中の鞍部。ガスで完全にルートを失う どうにか県境稜線に出た
テント場もガスの中。この直後、本降りの雨になった
白馬岳山頂 白馬岳から見た噴煙を上げる浅間山
白馬岳から見た噴煙を上げる新潟焼山 白馬岳から見た妙高山、火打山、焼山
白馬岳から見た東側 白馬岳から見た八ヶ岳と富士山
白馬岳から見た旭山と白馬岳の影 よ〜く見ると白馬岳影の山頂にブロッケン現象が!
白馬岳から見た五輪山、黒負山 白馬岳から見た鉢盛山の反射板
白馬岳から見た後立山南側 白馬岳から見た白馬村〜松本
白馬岳から見た槍穂〜劒岳(クリックで拡大)
白馬岳から見た南アルプス(クリックで拡大)
白馬岳から見た光岳〜南アルプス深南部
白馬山荘から見た旭岳 白馬山荘から見た旭岳の岩峰
村営頂上宿舎上の雪渓 テント場のテントは半減以下か?
テント場用の水場 標高が落ちるとガスの中へ
大雪渓上端のスノーブリッジが轟音とともに崩壊 雪渓上の霧の中から登ってくる登山者
ここから雪渓に乗る クレバス注意の標識とルートを示すトラロープ
僅か数分で雪渓歩きが終了 白馬尻小屋
林道終点 猿倉駐車場は空きがあった


 長いお盆休みの最終盤、天気予報では土曜日が晴れ、日曜は晴れのち曇りのまあまあの予報なのでテントを背負って出かけることに。ただし今週は日本の東海上をいくつも台風が北上するパターンが続いていて、台風から湿った風が入って大気が不安定な状態も続いていた。週末も台風がやってきていて、長野には直接の影響はないだろうが湿った気流の影響で早くからガスが上がり、日中は雨の可能性もある。でも金曜夜時点では白馬岳の土曜日の予報はずばり「晴れ」。にわか雨の文字も無し。どの程度信用していいのかわからないが、期待して出かけることにした。

 猿倉は久しぶり。長野市からだとオリンピック道路を一直線に進むと終点が猿倉になるので分かりやすい道だ。金曜夜の登山者用駐車場の入りは8割程度で平日夜にしては多い。天気予報では今夜はにわか雨だったが満天の星空であった。

 翌朝、まだ真っ暗で星空の時刻に出発。涼しいうちに高度を上げるためだ。猿倉山荘で登山届を出す予定だったが登山ポストが見当たらない。昼間なら発見できたかもしれないが残念。まだ早朝で他に登山者の姿は皆無だ。

 林道に上がって半分月明かりを頼りに終点まで歩くと車が1台。白馬尻の関係者だろう。白馬尻に到着する頃には薄明るくなり始めていた。ここからはまだ雪渓は見えない。今年はどこまで登ると雪渓にありつけるだろうか。

 残雪期ならば既に雪渓歩きだが、今の時期は右岸側の夏道を延々と登っていく。ケルンが登場してもまだ雪渓には上がれなかった。谷の少し上部には雪渓は見えているが末端はズタズタで危険で乗れない。雪渓の横に出ても所々で不気味なクレバスが口を開けていて、以前は雪渓上を歩いていたらしい個所も今は右岸の高巻道を通るようになっていた。

 ようやく夏道から雪渓に乗る個所に到着。標高は約1900m。この時期なので雪というより氷に近く、今回は4本爪の軽アイゼンの出番だ。6本爪よりグリップが効く足の置き方に格段の制限があるので初心者には向かないが、慣れた人には軽量化を考えると効果的。スプーンカットで足元が水平に近い窪みに足を置きつつ高度を稼ぐ。雪渓上を吹き下りる風は涼しくて夏には最高! 所々にあるクレバスをロープの誘導で避けつつ登っていく。

 標高約1950mで雪渓歩きが終わって今度は左岸側の夏道に乗る。少しの間は雪渓の上に積もったと思われる砂礫帯を歩くが、やがて一段上がった本当の左岸を歩くようになる。この頃には下山してくる登山者の姿が見られるようになり、振り返ると雪渓を登って来る人の姿も。

 左岸沿いの道は落石危険帯なので「休むな」の注意書きが多い。水も多くて夏山シーズンは休みたくなる心情は理解できるが、今はまだ早朝で気温は上がっておらず休憩は不要で快適に高度を稼ぐ。やがて軽装のトレラン集団に追い越されるが、彼らが避難小屋で休憩している間に私が追い越す展開となり、そのまま村営頂上宿舎到着まで先行となった。

 傾斜が緩むとお花畑だが既に夏の花のシーズンは終わりに近い。目立つのはトリカブトの紫の花。コバイケイソウは既に茶色く枯れていた。ここまで来ると下山の登山者が多い。天気予報に違わず頭上は快晴だが、杓子岳の稜線には早くもガスが絡み始めていた。

 村営頂上宿舎前の雪渓の雪解け水で水を補給し、濡れタオルで体の汗を洗い流す。今年は小雪でこの雪渓が溶けきって水が無いかと心配したが、見た目では水源の雪渓はたっぷりと残っていた。秋までに溶けて無くなってしまう心配はなさそうだ。

 テント泊なので標高が高い白馬山荘ではなく村営宿舎が本日の宿。普通は小屋入口に受付があるのだが「テント受付」の黄色い看板に導かれて小屋正面の入口ではなくテント場入口へ。ここにはトイレと一緒の建物で北側が小部屋になっていて、そこがテント場受付だった。以前の記憶が無いが、こんな方式ではなかったような気がする。入口には受付の「開店時間」はPM1:00からとの貼紙があり、それ以前に到着した人はテントを張って構わぬとのお達し。テント場には撤収作業中の3パーティーのみで本日到着は私が最初のようだ。そりゃそうだ、まだ8時前だし。場所を物色し一人用に適当な面積と地面の石が少なく平らな場所で端の方という条件で位置決め。最初に目を付けた一段高い場所は整地していたら1人用テントなら二張可能な広さになってしまったため(笑)、もっと大きなテント用に空けておくことにした。

 テント設営中に徐々にガスが上がってくるようになり、展開完了時には濃いガスに覆われて霧雨状態。まだ8時なのに・・・。しかしテントの中で過ごすには直射日光がないのはいいこと。とは言えまだ8時でテント内で明日朝までゴロゴロ過ごすのは暇すぎる。天気予報では雨の心配はないとのことだったので、計画していた杓子岳、鑓ヶ岳へとアタック装備で向かった。念のために最初から雨具装着だ。

 稜線に出ると霧雨ではなく通常の霧に変わる。地形の影響なのかテント場だけ霧の粒が大きかったようだ。体を動かすと暑くなり、杓子岳への登りでゴアを脱いだ。ガスは相変わらず濃く先行する登山者の姿が霞んでいる。それでも鞍部から見下ろす下界はガスはかかっておらず、稜線だけ雲の中らしい。

 杓子岳巻道分岐は山頂方向へ。ジグザグの急斜面を登っていくがガスで日差しがないので涼しくて助かるし、東から吹き上げる風が体の熱を奪ってくれる。霧の中から山頂標識と数人の人影が現れれば杓子岳山頂。ガスで展望皆無だが、ここは何度か登っているからいいだろう。写真だけ撮影して鑓ヶ岳に向かう。

 鞍部へと下るとガスの層を抜け出して視界が開ける。どうやらガスは標高2700m付近が境界らしい。中背山を往復した際に通った斜面は今は雪は無い。

 鑓ヶ岳への登りは急だ。この時間帯は日帰りで白馬三山を縦走する登山者の姿が目立つ。一般的には大雪渓を登って鑓音温泉側へ下るようだ。鑓ヶ岳が最後のまとまった登りだが、けっこうヘロヘロになっている若者も。私の方は体力に余裕あり。

 濃いガスで周囲は全く見えず、いくつかある案内の無い分岐は一番太そうなものを適当に進む。どこを通っても大差はないだろう。やがて尾根上に到着すると標識が登場、ここが鑓ヶ岳山頂への分岐だがガスで視界が無く山頂までの距離が分からない。しかし左へ登って僅か数分で山頂到着。

 鑓ヶ岳山頂もガスで視界なし。ここも何度か山頂を踏んでいるので展望はいいか。風を避けられる場所で休憩。三々五々、登山者が入れ替わり立ち代り上がってくる。大半の登山者は鑓温泉方面へと進んでいった。

 長い休憩を経て出発。それまでは普通の霧だったが出発時は雨粒が混じるようになりゴアを着た。残念ながら昨夜の予報より天候は確実に悪くなっているようだ。このまま本降りになるのか、それとも一時的なのか。一番怖いのは雷が来ることだが今のところ遠雷は聞こえない。

 鑓ヶ岳の下りでは雷鳥に遭遇。この天気ならいてもいいだろうと周囲をキョロキョロしながら歩いたかいがあった。子供は2羽だった。

 テント場へ戻る途中は断続的に小雨だったが、ゴール直前から本降りの雨に変わってしまった。朝のあの快晴が嘘のような天気。テント場受付が「開店」していたのでテントに財布を取りに行ってから雨の中で受付待ちに。ここも他の北アエリアのテント場同様にトイレ料金込みで\1000/1人だった。

 私がテントに潜り込む時が雨のピークで、こういうときにシングルウォールテントの弱点が露呈する。出入口を開けると内部に直接雨が入ってしまうのだ。それもテントを張った時にはまさが雨が降るとは思わず、風向きを考えずにテントを設置したが運悪く風上側が入口となってしまい、雨の吹き込みがよけい酷くなった。また、濡れた靴をテント内に入れなくてはならないのも大きな欠点。何か対策を考えないといけない。

 テントは購入後約2年で劣化はさほどないため大きな雨漏れはなし。縫い目の防水テープの劣化で微妙な雨漏れはあるが許容範囲。テントに入って雨が止むのを待つしかない。テント内で過ごすには直射日光のサウナ状態とどちらがいいだろうか? 1時間ほどで雨が止み、そのうちにテント内が明るくなったと思って外を見るとガスが切れて青空が広がり日差しがあるではないか! この天候が維持されにわか雨の心配が無ければ旭岳往復なのだが、常識的には夕方に向けてにわか雨の可能性が継続だろうか。しかしこの晴れ間を利用しない手は無く、濡れたゴアを外に出して短時間だが乾かすことができた。

 しばらくして再びガスに巻かれたが今度はそれほど濃くはなく、雨はしばらくないと判断して旭岳に向かうことにした。もちろん雨具は持っていく。今回は日除け目的で傘を持ってきたが稜線上は風があって雨対策での傘は使えない。

 稜線に出るとここはガスの高さギリギリで、旭岳との鞍部はかろうじてガスの層の下で視界があった。草付きが終わって鞍部付近の石だらけの地帯は道が不明瞭で、視界が無いとやっかいな場所だ。とくに帰りの時は草付きの夏道入口が分からないと草藪やハイマツ藪に突っ込むことになる。鞍部では軽装の男性とすれ違った。旭岳に登ったわけではなく時間つぶしでこの辺りをうろうろしていたのだろう。

 稜線に乗ると道がはっきりする。しかしこの道を進むと旭岳南を巻いてしまうので注意。以前登ったときは旭岳へは踏跡があって、その位置口には間違って入らないようロープが張ってあった。今回はロープが張られた距離はずっと長くなり、しかも踏跡入口には「登山道外」との標識まであった。ここから上に伸びる踏跡が旭岳山頂に達するものに間違いない。

 山頂までの急な登りはガラガラの崩れやすい尾根にジグザグに付けられた踏跡が続く。正規の登山道ではなく利用者が少ないので固まっておらず動く砂利が多い。踏跡が分岐する場所もあるがどちらも最終的には合流するので深く考える必要はない。

 傾斜が緩むと寝たハイマツが登場するが踏跡はハイマツの切れ間に付けられているので藪漕ぎは不要。もっとも、この寝たハイマツなら藪漕ぎではないか。ちょうどいい具合にガスが切れて青空を見上げながらの急登だった。しかし山頂南端の肩に到着すると再びガスが流れ出した。しかしガスの高さは旭岳山頂がギリギリ入る程度で清水岳側はガスが切れて景色が見えている。雨の心配はなさそうだ。

 さて旭岳の山頂であるが、以前登ったときにはこの辺りに手製の山頂標識があったように記憶しているが、今はケルンはあるものの標識はなし。今回の地図はエアリアマップなので山頂の詳細な位置は読取れない。しかし現場で見る限りは南端肩よりも北上した次の高まりの方が高いように思える。その高まりの東側に飛び出した位置には顕著な岩峰があり、それが一番高そうに見える。旭岳は少なくとも過去2回は登っているが岩峰の記憶はない。後顧の憂いが無いように岩に登っておくのが望ましいが登ることができるだろうか? 南から見ると登れそうにないような険しさだ。

 北へと続く尾根上には踏跡が続き、次の緩やかな高まりにもケルンがある。そして問題の岩峰だが南側は切れ落ちているが北側は傾斜はきついものの大きなクラックが走っていて、これを手がかり足がかりに登れそうな雰囲気だ。もちろん落ちれば痛いでは済まない高さだが、表面がツルツルではないので注意して行動すれば大丈夫だろう。

 小鞍部に下って見上げるとなかなかの斜度。てっぺんへ一直線に登るようなクラックは垂直に近く私の度胸では登れないので、斜め左上に伸びるクラックを辿ることにする。充分な足がかりがあるので登りは簡単だ。残念ながらクラックはてっぺんには達しておらず、途中から小さなクラックに乗り換えて上に向かう。ここは下りを考えると怖い場所で、できれば下りはロープで確保しながらにしたい場所だ。ただし技術的に難しい場所ではなく、あくまでも高度感の問題だが。

 割と簡単に岩峰のてっぺんに到着。狭い場所で2人くらいが限度か。ガスがかかって白馬岳が見えないのが残念。晴れていたら逆に高度感が凄くて足がすくむ場所かもしれない。すぐ西側の主稜線上の高まりと標高は同じ程度か。岩の上からだとあちらよりもあからさまに高いようには見えなかった。気持ちよく長居できる場所ではなく適当に写真を撮影して慎重に下った。

 帰りはガスが濃くなり鞍部付近もガスに覆われて夏道入口が見えなくなっていた。途中まではケルンが目印になったが緩やかな登りにかかってからはそれも無くなって完全にルートを失う。稜線まではさほどの距離はないので適当に進んだが見事に外れくじで、見渡せる周囲に夏道入口はない。草地の中の小さな流れの跡に入って上を目指すが、なかなか道が現れない。ここで最終手段でGPSの登場。すっかり存在を忘れていたが、こんな時に役立つ存在。私の機種は地図表示機能は無いがそれまで歩いた軌跡を画面上に表示可能で、その軌跡に重なるように歩けば往路の登山道に出られるわけだ。登山道より北側を歩いていることが分かったので沢を乗り換えて南へ針路変更。無事に登山道に出られた。

 主稜線へと登っている途中でポツポツと雨が落ちてきて、テントに到着すると同時に本降りに。ラッキー! この時間にテント場に到着した人は本降りの雨の中でテント設営でかわいそうだ。朝方は私のテントしか無かったテント場も混雑し始めていた。濃いガスで視界が制限される影響もあるのだろう、奥の方のテント場はまだ空きがあるが手前は混雑状態だった。手前側はトイレに近すぎて匂いが気になるので敬遠した場所だが、雨の中では贅沢を言っていられないだろう。

 雨は1時間ほどで止んで青空が見えたが再び1時間ほど雨。この日は日中に3回雨が降ったが夕方以降はガスは出たが雨が降ることはなく、ガスの濃さは徐々に薄まっているように思えた。

 翌朝は白馬岳山頂で日の出を見てから下山予定なので、3時過ぎに起床してのんびり朝飯を食ってテントを撤収、4時半前に軽装で山頂へと向かった。明け方は文句無しの快晴で月明かりが明るく、自分の影が地面に映るくらいだった。山頂での展望が期待できそうだが遠くの山は見えているだろうか。

 白馬岳へと向かう登山者のライトの列に混じって歩き出すが、森林限界を超えて障害物が無いので4時半を過ぎるとライト無しでも歩ける程度に明るくなってきた。東の低い空は雲が出ているので地平線(山並み)からの日の出ではなく雲から出てくる太陽を拝むことになりそうで、日の出の時刻は少し遅れるだろう。

 白馬山荘付近では山頂でご来光を迎えずに南へ縦走を開始するパーティーとすれ違う。山荘を過ぎると登山者の姿がぐっと増えた。振り向けば南アルプスが薄っすらと見えていて空気の透明度はまあまあだ。富山側は背の高い雲海で、剱岳と立山、別山、真砂岳が雲から頭を出している。

 登りきって山頂に到着すると南北に細長い山頂部は日の出を待つ人の列。100人はゆうに超えているだろう。眼下に見える白馬山荘に近い肩にもたくさんの人が見えている。松本から小谷にかけての安曇野盆地は低い雲海だが、その向こうの東の空は背の高い雲海で標高の高い山しか見えていない。その中でも目立つ存在が浅間山で、噴煙が立ち昇る様子がはっきりと見えた。これほど見えたことは私が小学生くらいの遠い過去意外は記憶にない。浅間山の火山活動は最近はやや活発化しているとはいえ、煙が出るほどではなく水蒸気中心の噴気程度だろう。普通なら目に見えないはず。推測であるが、今の気圧配置は東海上に台風があり湿った東風が吹き込んで湿度が上がっているはずだ。湿度が高い空気中を飛行機が飛ぶと、排気ガス中の微粒子を核として飛行機雲ができるように、火山の噴気に含まれる微粒子を核として水蒸気が凝集し雲ができたのではなかろうか。

 活火山といえばこの近くにもう一つある。新潟焼山だ。やや北に視線を移すと妙高山、火打山に続いてドーム型の焼山が見えていた。そしてその山頂からはまっすぐ上に一筋の煙が! ここにも明瞭な煙が見えていた。焼山も火山活動がやや活発化した状態だが噴気程度しか出ておらず、これだけはっきりした煙は見たことがない。やはり気象条件が原因だろう。

 東は雲海が高くて奥日光方面は全く見えず。奥秩父、八ヶ岳、富士山、そして南アルプスは見えている。南アルプスは日の出直後は聖岳までしか見えていなかったが、時間経過とともに雲海の高度が下がって深南部の中ノ尾根山まで見えるようになった。中央アルプスは重なっているので個別の山頂は判別できず。

 富山側は背の高い雲海で覆われ、山の頭が出ているのはおよそ標高2800m以上。剱岳は立山から切り離されて三角形の独立峰のように見えている。鷲羽岳、水晶岳、赤牛岳も雲の上。その左の平らなピークは野口五郎岳だろう。槍穂の右側に見えるのは乗鞍岳。帰ってからカシミールで確認したら木曽御嶽は乗鞍岳の真裏で見えなかった。後立山は南北に一直線に重なってしまっているが、唐松岳、五龍岳、鹿島槍、針ノ木岳、蓮華岳は確認できた。鹿島槍の北峰〜南峰鞍部の奥には常念岳。そう言えば常念岳山頂から北を見ると鹿島槍の双耳峰の間に白馬岳の三角形のてっぺんが見えていたのを思い出した。北側も富山側は雲海で朝日岳は雲の下だが、新潟側の五輪山、黒負山は見えていた。

 山頂滞在は1時間ほど。この時間になると山頂の人数は減ってきたが、今度は蓮華温泉方面への縦走者が次々とやってくるようになった。私は猿倉へ下山なので多くの人と逆方向だ。

 白馬山荘前で旭岳を見ると、昨日よじ登った岩峰が最高峰に見える。ただし、山荘からだと主稜線より岩峰の方が距離が近いのでその影響かもしれない。

 村営頂上宿舎に戻ってデポした大ザックを担いで猿倉を目指す。まだテント場のテントは半分くらい残っているだろうか。この人たちもたぶん大雪渓から猿倉への下山組だろう。まだ上空は快晴だが、昨日のように早い時刻からガスが上がってきてしまうだろうか。

 しばらくは石ゴロゴロで歩きにくい道が続く。小屋を出た直後は下山者の姿が多かったが、一群を追い越すと先行者の姿はほとんど無くなった。もっと早い時間に動き始めるのは大雪渓経由で下る人ではなく鑓温泉経由で下る人なのかもしれない。途中まで兵庫から来たという男性としゃべりながらゆっくりと下る。関西からここまで来るのは大変だろう。男性は避難小屋で小休止となり、ここからはいつもどおり私一人で歩く。

 雪渓を見下ろす斜面になると登ってくる人とポツポツとすれ違う。さらに高度を下げると谷間はガスに覆われる。時間が経過するとこれが稜線まで上がってくるのかな。日差しが遮られるので涼しくて有難い。雪渓を下る前に軽アイゼンを装着、下りで雪の上を歩く時間は僅か5分程度しかなかったが、雪の上を吹き下りてくる風は冷たくて気持ちよかった。空気が冷やされ水蒸気が凝結して雪面付近は濃い霧がかかっていて幻想的な光景だった。

 右岸側の夏道に上がって足元がちょっと緩い斜面に切られた夏道(秋道)を下り、安定した夏道へ復帰。白馬尻ではこれから登る人がまだまだいた。到着はお昼かな。林道終点では昨日朝と同じ車が止まったまま。林道歩きはできるだけ日影を選んで歩く。大きな沢で濡れタオルで全身の汗を拭ってさっぱりする。昨日は日中はずっとガスで気温が低くてあまり汗をかかなかったが、それでも濡れタオルの効果は抜群だった。

 林道の猿倉荘分岐では林道直進方向にロープが張られていなかったのでショートカットのため林道を歩いた。駐車場手前のコンクリートブロック間に張られている車止めのチェーンは開放されていて、今は駐車場の林道入口の車止めだけだった。

 駐車場は金曜夜の時点よりも車の数は減っていた。整理員がいて車の誘導をしていたが、今日はいなくても大丈夫な程度の車の入り方だった。話を聞くと今日が最後の出動らしい。テントを虫干ししながらいろいろ話を聞いたが、やはり今年は白馬村でも降雪量が大幅に少なかったとのこと。冬の除雪が楽だったと言っていた。

 びしょ濡れだったテントも1時間弱の虫干しですっかり乾いた。それと同時にシュラフとゴアも車に引っ掛けて干したので、湿ったものは全部干し終わった。ここから見上げる稜線は既に雲の中だが(雲海になっていて上は晴れているかもしれないが)、下界はよく晴れて猿倉でも日向は暑いくらいだった。
 

 

山域別2000m峰リスト

 

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